PROFILE
- 教育学部 教育学科 初等教育専攻 幼児教育コース 4年生
- 上山 有彩さん
上山有彩さん
大阪府生まれ。大阪府立東高等学校卒業。
9月末に教員採用試験があったため(取材時は10月中旬)、休みの日もずっと勉強漬けだった上山さん。週に1度の小学校での学習支援ボランティアが楽しみで、子どもたちに『上山先生』と呼ばれるのが最大の癒しとのこと。「大学のジャージに上山とネームプレートを付けて元気いっぱい通っています」。
幼児期から児童期の教育は、人格形成の基盤となるため非常に重要だとされている。 この大切な時期を家庭と連携して支えるのが、保育士や幼稚園教諭、小学校教諭であり、子どもたちが初めて「先生」と呼ぶ存在だ。 「先生」になるためには免許・資格が必要でそれぞれ職種に応じた教育課程で学び、特化した実習経験を重ねなくてはならない。
大阪成蹊大学教育学部の初等教育専攻幼児教育コース4年生、上山有彩さんは、入学時に選択した『幼児教育コース』で取得できる「保育士資格」と「幼稚園教諭一種免許状」に加えて、「小学校教諭一種免許状」に必要な課程を修了し、3つの資格・免許を得る「トリプル免許取得」を実現して小学校教員採用試験に現役合格した。 「勉強や大学生活など自分が楽しいと思えることは全力で取り組みました」と笑顔で達成感を語る上山さんに、大学生活を振り返っていただいた。
▲幼児教育コースの施設プレイルームでインタビューを受ける上山さん
二つのアドバイスが導いた「小学校の先生」という夢
「子どもが好きで、将来は子どもに関わる仕事に就きたいと思っていました」。
「子どもに関わる仕事」と、ぼんやりとした夢を抱えていた高校生の頃、進路相談で 先生から「上山さんは小学校の先生に向いている」とアドバイスをもらった。「実は中学生の時も当時の先生に、小学校の先生に向いていると言っていただいたことがあったので、小学校の先生という仕事が自分ぴったりなんだ、と考えるようになりました」。
違う時期、そして違う人から同じ答えが返ってきたことが、心を固める大きな理由となり、上山さんは、教育学部へ進学、小学校教諭一種免許状を得て小学校の先生になると決心する。そして大学選びを本格化させる中で、将来について真剣に考えているうちに、一つの疑問が浮かんだ。
“子どもたちはどんなふうに幼稚園から小学校へ進学するのだろう”
この疑問がのちに上山さんの大学生活を大きく左右することとなる。
夢が広げた幼児教育からの視点
「どんな先生になりたいか、小学生の時を思い出しながら考えていたら、それ以前に、幼稚園時代の記憶がほとんどないことに気がつきました」。
幼稚園でどんなことを学び、どのように遊ぶのか。興味が膨らむままに幼児期について調べていくと、「小1プロブレム」という問題を知ることになった。
「『小1プロブレム』とは、幼稚園との環境の差に戸惑い、適応できずに不安定な状 態が続く子どもの行動や問題を指します。幼児についての心理学や行動学、アプロー チ法を知っていれば、そんな問題に直面した時に、子どもに寄り添った対応や解決策 を見出すことができるのではと思いました」。
子どもたちは、幼稚園から間をあけずに小学校へ進学するのだから、幼稚園、小学校と区切りをつけずに一つのつながりとして学ぶことができないか。小学校教諭一種免許状を取得するのは大前提で、幼児教育もしっかり学びたい。そんな思いを大学選択の条件に加えたら、行きたい学校が自然と絞られた。
「大阪成蹊大学 教育学部は、『教育学科 初等教育専攻』というくくりの中に、『初等教育コー ス』と『幼児教育コース』があって、連携している様子が自分の目的にぴったりだと思いました」。
上山さんは、まずは0歳から6歳までの幼児期もしっかり学びたいと、『幼児教育コース』を選択する。そして『幼児教育コース』で学びながら小学校教諭一種免許状も得る、通例よりも難関な方法で先生をめざすことになった。
「幼児期と児童期の専門知識を持ち、行動学、心理学の面からも子どもを第一に考え、寄り添える先生。休み時間には子どもたちと全力で遊びながら、授業では切り替えて指導できるメリハリある先生をめざします」。
アクティブラーニングで磨く実践力
数多ある大学の中で、上山さんが大阪成蹊大学教育学部を選んだ理由は他にもある。オープンキャンパスで体験したアクティブラーニング型授業に強く惹かれたからだ。
「自分の名前を入れた俳句を作ろうという国語の授業を体験しましたが、高校よりも活発なグループワークでびっくりしました。同じ授業に参加していた他の高校生と、意見を交換しながら俳句を完成させるのがとても面白くて、こんな授業を毎回受けられる学校なら、楽しく勉強ができるという確信が持てました」と上山さん。
これまでの授業で特に印象深いのは、4人1組で行った3歳児対象の模擬授業だそうだ。「3歳児に向けた授業をグループで作りました。発表では先生役も生徒役も私たち学生。他のグループが模擬授業を担当する時は、3歳児になりきって授業を受けました」。大学生が3歳児になるのだから、ユーモラスに見えるかもしれない。でも、未成熟な3歳児の視点を想定するには、その時期の心理や行動を理解している必要がある。
「子どもの立場になってものを見る経験で、自分たちが考えた授業を客観的に見つめることができ、子どもの行動を理解するきっかけとなりました」。
この模擬授業だけでなく、大阪成蹊大学では全ての授業がアクティブラーニング型で展開されている。グループワーク、グループディスカッション、ディベートなどを数多く経験したおかげで、上山さんは実践力や対話力が養われた実感を得ている。
▲小学校実習室にて
「トリプル免許取得」と「教員採用試験」という難関を超えるために
『幼児教育コース』の主たる免許状は、「保育士資格」と「幼稚園教諭一種免許状」の2つだ。 それに「小学校教諭一種免許状」を加え、トリプルで免許を取得するためには、上山さんが在籍する『幼児教育コース』の勉強に加え、初等教育向けの科目履修が必須となる。『幼児教育コース』の通常単位よりも、4年間で40単位近くの追加が必要で、相当数の授業を受講しなくてはならない。もちろん、授業の分だけ課題の提出もある。さらに実習が重なると大変さは一層増す。上山さんは、週に2日は1限から5限まで授業をぎっしり詰め込むことになった。
「履修スケジュールと課題をこなすのが本当に大変でした。でも同じように複数の免 許状を取得しようと頑張る友人たちがいて、一緒に課題に取り組んだり、共感し合 い、励まし合ったりしながら乗り越えました。友人たちの存在はとても大きいですね」。
また、『幼児教育コース』と『初等教育コース』が同じ専攻下にあり、先生同士の連携が密に取られている大学の環境にも助けられた。
「幼児教育と初等教育で共通点や相違点、重点の違いなどをその都度教えていただき、内容が重複することなく学びを深めることができました。個別の相談にも快く対応していただけたことも支えになりました」。
それでもトリプル免許取得のための履修の多忙さは過程に過ぎない。最終的にめざすは教員採用試験合格。試験の仕組みが年々変わっていく中、情報収集や試験・面接の対策も並行して日々取り組む必要がある。空きコマを利用して自習室に通い、教職教養の勉強に根を詰めるような毎日だ。でも上山さんは確信に満ちた明るい声でこう話す。
「履修に課題、試験のための学修、実習で毎日いっぱいになりますが、その大変さが充実感となり、同時に自分でも“ここまでできる”という自信につながりました」。
その自信はさらなる努力を後押しし、結果として試験に合格する原動力となった。
▲教職キャリアセンターは自習や面接練習、相談など教員採用試験に向けて頻繁に利用
サークル活動も立ち上げから全力で
勉強に忙しい中でのキャンパスライフついて尋ねると「お箏サークルで活動しました。サークルを立ち上げたのは私なんですよ」と弾む声が返ってきた。高校の部活で始めたお箏を大学でも続けたいと思っていたところ、学校にお箏があることを知った。大学に入学してすぐのことだ。
「コロナ禍をきっかけに初等教育コースのお箏の授業がなくなったそうで、しまわれていました。それならばお箏サークルを作って使わせてもらおうと即メンバー探しを始めました。5人いないとサークル結成ができないので」。
高校時代に吹奏楽部やバンド部といった音楽系の部活に所属していた人や系列の大阪成蹊女子高校で箏曲部に所属していた人がいると聞けばその人たちに会いに行った。大阪成蹊大学には強化クラブに指定されている吹奏楽部があるが、入部に迷っていると耳にすれば、サークルという気楽さをアピールして誘った。
「学部もコースも違う5人が集まったので、サークル活動ができるようになりました。週に1回集まって練習し、大学祭などで演奏を披露しています」。
目標に向かって突き進む上山さんのひたむきさに加え、ポジティブさと大胆さが伝わるエピソードだ。
「勉強や大学生活など自分が楽しいと思えることは全力で取り組みました」。
手を抜かず、全力でさまざまなことにトライする。「大変さ」や「忙しさ」をマイナスと捉えず、「充実」や「成長」という言葉に変換する。ハードルが高いトリプル免許取得と教員採用試験現役合格をクリアした彼女の底力は、このポジティブさにあるのだろう。
▲オープンキャンパス運営スタッフ「桃李クラブ」の中心メンバーとしても活躍
大学、そして高校生の後輩たちへ
最後に上山さんに後輩へのアドバイスをお聞きした。
「トリプル免許取得をめざすのは、本当に地道な努力が必要ですが、その大変さをクリアすることが自信につながりますし、きちんと評価されると思うので頑張って欲しいです。それから、皆さんはコロナ禍を経験し、文化祭や運動会が中止となったあの寂しさを一度でも経験していると思います。だから学校行事や今のうちに経験できることは全力で取り組んで楽しんでください」。
※在学生の表記は2024年10月取材時のものです。