OSAKA SEIKEI STORIES

アルティメットを通じて磨かれた、人としての輝き

経営学部 スポーツマネジメント学科4年生橋爪 ひかりさん

フライングディスクをパスして運びコート端を目指す、アメリカンフットボールにも似た「アルティメット」というスポーツ。ディスクを操る技術、走力、跳躍力、持久力などさまざまな能力が求められることから「究極」を意味するこの名前が付けられた。アルティメットのウィメン部門U24(23歳以下)日本代表であり、大阪成蹊大学アルティメット部に所属する経営学部4年の橋爪ひかりさん。2023年7月、イギリス・ノッティンガムで開催された「WFDF2023世界U24アルティメット選手権大会」に出場し、銀メダルを獲得した。爽やかな笑顔を見せる彼女に、アルティメットの魅力とどのようにして日本代表になったのか、お話を聞いた。

体育の先生の一言が、頭の片隅に

橋爪さんがアルティメットを始めるきっかけとなったのは、高校3年生のとき、体育の授業でこのスポーツが行われたことだった。そのとき、体育の先生に「知名度が高くないスポーツで、日本代表を目指してみるのも良いんじゃないか」と言われたことが、なぜか心に残った。

中学校ではバドミントン、高校ではハンドボールと部活動に励んできた彼女。熱心に打ち込んできたこともあり、それらの部活動は自分の中で「やりきった」という思いがあったという。そんな中アルティメットという新たなスポーツに出会った。
「一番の魅力は、ダイナミックなプレーが多いこと。ディスクを遠くまで飛ばすロングスローやダイビングキャッチなど、飛んだり走ったり。また、実際にやってみると、ディスクを風に負けないように強く飛ばしたり、風を読みながら投げたりといった細かな技術が必要で、ダイナミックさとその繊細さの両方を楽しむことができるんです」と嬉しそうに彼女はその魅力を話す。「ディフェンスと競りながらや、落ちる寸前のギリギリのところでディスクをキャッチできた瞬間は最高です」とさらに笑顔を弾ませながら教えてくれた。


▲キャッチは得意なプレーの一つである

憧れていた大学生活を理想通りに満喫

体育の先生の言葉もあり、大学受験の際、橋爪さんはアルティメット部のある大学を志望校として探していた。大阪成蹊大学への進学の決め手となったのは、過去に日本代表選手を輩出しているという記事を目にしたこと、そして「スポーツマネジメント」を学べるということだ。
「将来社会に出ても、スポーツに関わっていきたいと考えていました。スポーツマネジメント学科で、スポーツを経営する立場・支える側について学ぶことは、将来の選択肢を広げることにつながると思いました」と橋爪さん。入学後に実際に学んでみると、スポーツをするだけでなく、観ることも好きに。これまで以上にもっとスポーツを好きになった。

学業以外の面でも、大学生活に強い憧れがあったという。「アルバイトをしたり、友人と遊んだり、旅行をしたり。大学生活を楽しみたいと思っていました。まさにその理想通りに楽しんでいます。また部活動をきっかけにいろんな所に行けたのも良い思い出です」。学業や部活動に勤しみながらも、憧れていた大学生活を満喫しているようだ。


▲休みの日には友人と旅行などをしてリフレッシュし、大学生活を満喫している(右:橋爪さん)

先輩を目指し、技術を身に付けていった

大阪成蹊大学のアルティメット部に入部し、橋爪さんは本格的に競技人生をスタートさせた。すると部には憧れとなる先輩がいた。足が速くチームメイトをフォローするためによく走る。そんな姿を目標にしたいと思った。そして「何よりも楽しそうにプレーをする。その姿は憧れでした」と橋爪さん。その姿を追いかけ、彼女は練習に励んでいく。大学を訪れてくれたOGに教えてもらったり、大会や先輩を介して知り合った社会人チームの練習に参加させてもらうこともしばしば。練習を重ね、技術を身に付けていった。そんな中、競技人生の大きな転機となったのが大学2年生の夏、U 24日本代表の選考会だ。

自分の強みを発揮して、U24日本代表に

U24日本代表の選考は、初めにWEBから自分で応募する。その後、半年ほど掛けて計4回の選考会が行われる。彼女に確かな自信があった訳ではない。アルティメットを始める当初からの想い、「日本代表になりたい」。なれる希望があるならと一歩踏み出し応募した。

選考会では、ディスクを投げる、走るといった基礎的なメニューの他に、ランダムに振り分けられたチームごとで試合が行われた。自分の強みをいかに出すかが見られる。彼女の強みは、ゴールに向かって走るスピード、ディスクを絶対に落とさないキャッチしきる力だ。「強みをその選考会で発揮するためには、自分のやりたいこと、考え方を言語化して、チームメイトに伝えないといけません。なので、コミュニケーション能力は鍛えられました」と選考会を通しての成長を話す。アルティメットは、自分の考えを言語化する力・コミュニケーション能力が、特に求められるスポーツの一つだ。試合は審判がおらず、全てセルフジャッジで行われるため、曖昧な状況になったときには、ルールをもとに自分の考えを主張する必要があるからだ。 選考会中にも多くのことを学び、成長した彼女。
実力が認められ、競技を始めて一年ほどで、U24日本代表に選ばれた。


▲世界大会に向けて学内で激励会を開催

その後「WFDF2023世界U24アルティメット選手権大会」に出場。決勝でアメリカに敗れたものの、見事銀メダルに輝いた。
「日本代表としての活動を通して、競技面だけでなく、精神面や行動面など多くの刺激がありました。悔しい反面、楽しいことも多く、新たな知識もたくさん増えました。大会期間中は、すべて出し切ることができ、本当に楽しくプレーができたと思います」と大会を振り返った。


▲WFDF2023世界U24アルティメット選手権大会にて(写真提供:一般社団法人日本フライングディスク協会)


日本代表の経験がもたらした精神的な成長

日本代表として活動したことで橋爪さんの心にも変化があった。「『日本代表』として周りから見られているというのは意識するようになりました」。一つひとつのプレーに気が抜けない。走ったり、声を出したりと当たり前のことをしっかりとする。その意識は特に強くなったという。自分が走らなければ他のチームメイトがカバーに追われて負担になる、ディスクをキャッチし損ねて落としたら攻守交代となる。アルティメットでは当たり前のことが勝ち負けに響いてしまうのだ。日本代表としての経験が、精神的な成長へとつながった。

もう一度日本代表へ、そして春からは社会人に

今後の目標について伺うと、「もう一度U24日本代表を目指し、次の世界大会ではアメリカにリベンジして、準優勝だった雪辱を果たしたい」と語ってくれた。4月からは、東京の強豪チームへと所属する。新社会人としての仕事と初めての一人暮らしに不安も口にしていたが、一方で新生活は楽しみとも話す。アルティメットを通して成長した言語化する力・コミュニケーション能力、精神面は、社会人としても活きてくるだろう。また、新たな環境での生活は人としての成長につながるはず。そして、人としての成長がアルティメットにも良い効果をもたらしてくれるだろう。将来、年代のカテゴリーのない日本代表として、世界と戦う日を期待したい。


▲アルティメットを通じて得たものは大きい

大学、そして高校生の後輩たちへ

最後に、橋爪さんに後輩へのアドバイスをお聞きした。
「将来が決まっている人も、決まっていない人も、いろんな経験を今のうちにして欲しいなと思います。今やりたいことや目標があるなら、それを突き詰めていったら大きな経験になるはずです。やりたいことがない場合は、ちょっとでも良いかなって思う方へ進んでいくと良いと思います。自分で選んだことなら後悔は少ないと思いますし、頑張ったことは経験になるので、怖がらずに自分で選択した道へ進んでいってください。その経験がきっと将来の役に立つはずです」。

大阪成蹊大学アルティメット部「plumbonds」は、毎週月・水・土曜日に活動中。近年は男女ともに全国大会に出場しています。大学からプレーを始める学生が大半を占める中、男子部員もU23関西選抜に選出されるなど優秀な成績を納めています。また、女子チームは2022年の学生選手権においてSOTG(スピリット・オブ・ザ・ゲーム:各選手のフェアプレイに対する責任感)の数値が全国1位となるなど、競技力だけでなく、精神面・行動面でも好成績を納めています。


 

PROFILE

橋爪ひかりさん
神戸市立六甲アイランド高等学校卒業。
休日は、友人と洋服を買いに行ったり動画配信サイトで映画を見たりと、のんびりと楽しく過ごしている。
背番号は「89」。高校の部活動でのコートネーム(選手同士がコート内で瞬時に呼び合うためのあだ名のようなもの)である「ハク」から。「ハク」は、「琥珀(コハク)みたいに輝くように」と当時の先輩から付けてもらったと教えてくれた。