PROFILE
- 大阪成蹊大学 芸術学部 造形芸術学科 ファッション・コスチュームデザインコース3年生
- 中川 優里さん
- 大阪成蹊大学 芸術学部 造形芸術学科 ファッション・コスチュームデザインコース3年生
- 角田 桃奈さん
中川 優里(なかがわ ゆうり)さん
現在の在籍学部:大阪成蹊大学 芸術学部 造形芸術学科 ファッション・コスチュームデザインコース3年生
兵庫県立伊丹西高等学校出身
角田 桃奈(かくた ももな)さん
現在の在籍学部:大阪成蹊大学 芸術学部 造形芸術学科 ファッション・コスチュームデザインコース3年生
ノートルダム女学院中学高等学校出身
今年2回目の参加予定の「ファッションでフィリピンの貧困層の子どもたちを笑顔に~グローバルアクティブラーニング」。昨年も参加し今年も学生リーダーを務める中川優里さんと角田桃奈さんに、振り返りと今年の抱負を聞いた。
▲角田さん(左)、中川さん(右)
ファッションという切り口で、社会へと一石を投じる
このグローバル・アクティブラーニングは、NPO法人「DEAR ME」と協働しており、2年半にわたり実施した本プロジェクトは、大学の授業として社会問題解決・社会貢献活動を実施するという全国でも類を見ない試み。取り組む内容は、フィリピンにおける貧困問題。貧富の差が激しいフィリピンにおいて、貧困層の子どもたちが「自分の夢を見る」ことは容易ではない。例えばある子どもに将来の夢を聞くと「家族を養うために〇〇になりたい」など、家族・家計を支えるための現実的な答えが返ってくるのである。自分のための「夢」を持つということは、実は経済的自由のもとに成り立つ社会特権である。
そこで、「誰もが平等に」「自分のために」「夢を描ける世界」の重要さを社会へ向け広く発信すべく、子どもたちが「自分の希望が詰まった服を着て」、「自分の夢を表現する場」としてNPO法人「DEAR ME」は2015年からファッションショーを開催してきた。この活動に感銘を受けた大阪成蹊大学が10回目のファッションショーに衣装提供としてプロジェクトに参画した。一部の子どもたちが経済格差などで教育を受けられず、家族の生計のために将来の機会を奪われてしまう現状について知り、子どもたちが「自分のために生きられる」社会の重要性をファッションを通じて発信している。
【連携企業 NPO法人 DEAR ME 】公式サイト(https://npodearme.com/)
漠然としたイメージでスタート
NPO法人「DEAR ME」とのプロジェクトの中で、学生は衣装だけを作ればいいのかなという漠然としたイメージでスタート。キックオフの打ち合わせから、子どもたちとオンラインで打ち合わせをしたり、過去のファッションショーの映像を見たり、またスラム街・貧困などについて事前学習を実施。
「スラム街についてもあまり実感もなく、貧困層という点から、はじめは正直少しマイナスな先入観を持ってしまっていました。私たちが作った衣装も楽しんでくれるのかなと心配していましたが、オンラインを通じて対面をした時、本当に弾けるような笑顔で話してくれて、すごく楽しみながらデザイン案を描いてくれました。実際に届いた絵も夢や希望が詰められていました。この子たちが衣装を着てくれるのだと実感がわくようになり、みんなでこのプロジェクトを最高の思い出にしようと思いました」と中川さんは当時の心境を語った。
誰かのために衣装を作るということ
初めて誰かのために衣装を作ることは想像以上に大変だった。必ず守らなければならない納期、子どもが成長して大きくなっていることに対応できるサイズ感にすること、歩いた時の見え方など、ただ授業として作るだけでなく、想いを受け取りながら作る衣装は大変だった反面、すごく大切な時間になったと中川さんは語る。
角田さんは「私が担当したのは9歳の女の子の衣装で、“ピンクのお姫様風とお医者さんの要素を足した可愛らしいドレス”がテーマ。彼女が希望する女の子らしい世界観を出すために、色んなピンク色のシャンタンやサテン生地を使用し、ドレスの質感を表現しました。全身の衣装を制作することが初めてだったので難しかったのですが、先生のご指導のおかげで技術が身につきデザイン通りに仕上げられてすごく嬉しかったです。」
中川さんは「私が担当したのは将来の夢が料理人の子だったので、エプロンの要素を取り入れました。舞台に立つので少しでもボリューミーかつ華やかになるように、ボリューム感のあるスカートや襟の部分のフリルをつけ、特別感を演出しました。」と制作時を語る。
▲昨年のファッションショーで担当した子どもとランウェイを歩く中川さん
▲子どもとポーズを決める角田さん
▲現地の子どもと交流を深め、子どもたちも心を開いてくれた
ファッションショーを通して感じた「服作りの本質」
迎えたファッションショー当日。70人以上の子どもたちがモデルとなり、輝いた笑顔をランウェイの上で表現した。子どもたちが衣装を着た光景を目にすると、参加した学生全員が号泣した。子どもたちも学生に心を開き、学生たちが帰国しなければならないことに涙した子どももいた。
昨年を振り返り、「今回誰かのために服を作って喜んでもらえたことが、このファッションショーを通して一番得たものでした。着る人の喜びが大きく制作者である私たちに伝わったからこそ、服作りの本質を感じられました。」と角田さん。 中川さんは「大人も子どもたちもみんな性格が明るくて、小さな子は英語が話せなかったのですが、衣装を着て喜んでいるのもわかり、なんとかボディランゲージで伝わりました。笑顔は国境を超えるというような話がありますが、ファッションは国境を超えると感じました」と語ってくれた。
▲ファッションショーは大成功。感動のステージだった
2回目のファッションショーに向けて
昨年は初めての参加だったため、すべてが手探りの状態だった。一度経験したからこそ分かることがある。 「今年はこんなポーズの時、かわいいだろうとか、想像しながら衣装制作ができるので、より想いを込めた制作がしたいですし、初めて参加する後輩に対しても、適切なアドバイスができればいいなと思います」と抱負を語る。
▲次年度に向けて振り返りなどをまとめた冊子を学生が作成
6月にキックオフを迎えた今年のプロジェクトでも学生リーダーとして、学生たちを引っ張っている二人。 中川さん、角田さんは「社会に出てもこのフィリピンでのファッションショーの経験は生かせられる」と語る。
そんな二人の将来の夢を聞いた。 中川さん「現時点ではファッションデザイナーとして自分のブランドを持つことです。お洋服を通して1日のテンションが変わるし、ファッションが個々に与える影響はたくさんあると思います。私が考えたお洋服を着て、生きている上で少しでもプラスの気持ちになるようなオリジナルブランドを持つことが私の目標です。」 角田さん「私はファッションに関する企業でデザインをすることです。」と輝く笑顔を見せる。今回のファッションショーを経験してさらに成長する彼女たちのこれからの活躍が楽しみだ。
▲中川さん
▲角田さん
※在学生の表記は2024年6月取材時のものです。