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人に作品を見られることは、実は全然怖くなくて、むしろ楽しい

2025.07.15

PROFILE

第13回 佳作(入選)、第12回 大阪成蹊芸術優秀賞(銀賞)、第10回 A部門金賞
岸本 理愛 さん

岸本 理愛(きしもと りな)さん
現在の在籍学部:大阪成蹊大学 芸術学部 造形芸術学科 イラストレーション・美術コース2年生
受賞名:第13回 大阪成蹊全国アート&デザインコンペティション 佳作(入選)
受賞作品名:『半身半疑2/2』
受賞名:第12回 大阪成蹊全国アート&デザインコンペティション 大阪成蹊芸術優秀賞(銀賞)
受賞作品名:『遊泳、あるいは快眠の妨げ』
受賞名:第10回 大阪成蹊全国アート&デザインコンペティション A部門金賞
受賞作品名:『令和→』(れいわから)
受賞時の在籍校:大阪府立工芸高等学校3年生(第13回)・2年生(第12回)、摂津市立第二中学校3年生(第10回)

第13回 佳作入選、第12回 大阪成蹊芸術優秀賞(銀賞)、第10回 A部門金賞を受賞され、現在は本学芸術学部のイラストレーション・美術コース2年に在籍中の岸本理愛さんにお話しを伺いました。


▲第12回 大阪成蹊芸術優秀賞(銀賞)受賞作品『遊泳、あるいは快眠の妨げ』


◾️受賞された作品の世界観、タイトル名の背景・理由、作品にかけた思いなどをお聞かせください。

『遊泳、あるいは快眠の妨げ』
タイトルにも使われている遊泳とは「泳ぐ」ことを意味していて、水にぷか〜っと浮かんでいるのはとても気持ち良いけれど、浮かびながら眠ることはできません。女の子を取り囲むかわいいアイテムや服は娯楽を表していて、「楽しいことを考えている時間は価値ある時間だけれど、それに溺れて現実から逃げるのは違う」という自分への注意喚起のような意味を込めて描きました。水中は自分の頭の中を表し、水の外は現実を表しています。周りを泳いでいる魚たちは自分の脳内の都合の良さをゆったりと泳ぐ優雅さで表現しました。作品制作時、周りと自分の技術差に悩んでいたので自分に思いっきり喝を入れるつもりで注意喚起的な絵を描きました。

『半身半疑 2/2』
この作品を描いたのは高校3年生、つまりコンペティションに出品できる最後の年でした。最後の年に相応しいような絵にしたくてコンペだからと身構えず、自分のやりたいことを出し切ろうという思いで作品を制作しました。なので、画面に私の好きなかわいいモチーフを詰め込み、私らしさを画面全体で表現しました。背景は私がよく作品内で用いる青海波をモチーフにした模様で埋め尽くし、描くアイテムたちは私の手に任せて描き、考え抜いた構図にせず、偶然が引き起こす良さを大切にしました。タイトルは「半信半疑」という言葉を捩り、こちらを伺うように女の子が顔を半分出して見つめているという情景から「半身半疑2/2」というタイトルをつけました。「2/2」というのは高校1年生の時に描いた絵の連作としてこの作品を描いたのでつけました。受賞後も連作を続けていて、今4作目を描いている途中です。


◾️作品の制作期間はどれくらいですか。

『遊泳、あるいは快眠の妨げ』は時間がある時に少しずつ制作していたので、ずっと描いていたわけではありませんが、半年くらいは制作していたと思います。『半身半疑 2/2』は2ヶ月ぐらいで描きました。


◾️作品制作にあたってのポイント、工夫したところ、苦労したところなどをお聞かせください。

『遊泳、あるいは快眠の妨げ』
画面内に散らかっている色を、どうやったらうまくまとめられるかに一番悩みました。色のカラフルさも残しつつ、水中にいる感じも演出したかったので透明水彩を使って画面全体にフィルターをかけるように塗りました。いつもはオリジナリティを出すためにモチーフは実物を見ずに想像で描きますが、この絵は描きたいモチーフを調べ、描いたモチーフが多いです。ただ好きなものを描くのではなく、絵の中でそのモチーフはどの立ち位置にいるのかお話を考えながら描きました。

『半身半疑 2/2』
絵の中に私がいるのがポイントです。面白味のある絵にしたくて、自分の絵(主にコンペに出す絵)には自画像を入れるようにしています。自分の色覚センスに自信があるので、複雑な塗りではなく単純なベタ塗りで勝負しました。自分の描くフリーハンドの線が大好きなのでそれがダイレクトに活きる筆での描画をしました。


▲第13回 佳作(入選)作品『半身半疑2/2』


◾️受賞したときの気持ちは?

『遊泳、あるいは快眠の妨げ』
かなり自信作だったので、何か賞を取るかなとは思っていたのですが、実際に賞を取ることができてとても嬉しかったです。高校入学後初のアート&デザインコンペティションでの受賞だったので受賞作品が載っているパンフレットの自分のページを何度も見返していました。あと、家に景品として銀メダルが届いてびっくりしました。

『半身半疑 2/2』
この年は3作品出品したのですが、一番私の個性が爆発している作品が入賞して、「この作品が入選したの!?」と驚きと嬉しさが同時に来ました。個性を包み隠さず表現した作品で初めて賞を取ることができたので自分の作品により自信が持てるようになりました。

どちらの作品も賞を取ることができて本当に嬉しかったのですが、もっと上の賞をとりたかったという悔しさは、出品をしていた中学生からの6年間毎年感じていました。


▲中学3年生時にA部門金賞を受賞した作品『令和→』(読み:れいわから)


◾️現在、大学ではどのような作品制作に取り組んでいますか。

現在は、アナログイラストだけではなくデジタルイラストでの制作にも力を入れています。最近は自分の個性をうまく扱うことができるようになってきている気がして、制作している時間がとても楽しいです。人に作品を見てもらうことが好きなので、友達や先生に作品を見せたり、授業外では積極的にコンペに応募しています。授業で描いた絵をTシャツにしてみたり、コンペで初めてイラスト以外の絵を出品してみたり、やってみたいと思ったことはなるべく実現するよう心がけています。


▲授業で初めてデジタルで描いた絵をTシャツにしてみた


▲「COPIC AWARD 2024」に応募し、「次世代アーティスト賞100選」に入選した作品『DAMAGE!』


◾️受賞当時(高校生)と比べてスキル面や作風などで変化はありますか。

作風の変化としては受賞当時は漫画風の絵柄でイラストを描いていましたが、現在は自画像をもとにしたデフォルメキャラクターを用いて制作しています。思い切って作風を変えてみてから、自分が本当に描きたかったものが見えてきて、かなり制作しやすくなりました。まわりから見た良さより自分が納得する良さを大切にするようになりました。スキル面としては、基礎を再度学んだことで絵が上手くなりました。


▲大学入学後に制作した作品


◾️現在の制作環境についてどう思いますか。

満足しています。先生は授業・課題内容の相談だけではなく、コンペ応募など個人的な相談も親身に話を聞いてくださり創作活動を進めていく際とても助かっています。プレゼンや講評の機会も多く、他の人の作品を見て学ぶことができて、個人制作だけでは得られないものがたくさんあります。


▲コピックペンを用いて作品制作することが多い


◾️アート&デザインコンペティションに挑戦する高校生・中学生へのメッセージをお願いします。

アート&デザインコンペティションという言葉の響きで緊張してしまいますよね。でも、「こんなに素敵な作品ができた!みんな見て!」という気持ちで出品してみてください。私はそんな気持ちで中学1年生から高校3年生までの6年間、毎年このコンペに作品を出品していました。人に作品を見られることは、実は全然怖くなくて、むしろ楽しいんです。

「絵に正解はない」。この言葉は私の創作活動において1番の原動力です。もう大学生ですが、私はまたこのコンペに応募したいなあと思っています(笑)。6年間という限られた期間、みなさんぜひ挑戦していただきたいです。


■「大阪成蹊全国アート&デザインコンペティション」特設ページはこちら


※在学生の表記は2025年7月時のものです。