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「映像が好き」にスキルを重ねた作品が
若手登竜門の短編映画祭で審査員特別賞を受賞!

2025.02.25

PROFILE

芸術学部 造形芸術学科 バーチャルメディア・ボイスクリエイターコース3年生
炭井 逸暉さん

大阪府生まれ。大阪府立工芸高等学校出身。
普段は大学の課題とアルバイトに忙しく過ごし、学生のうちにできることの一つとして「旅に出かける」ことを積極的に楽しんでいる。海外なら台湾や韓国が好き。国内ならローカル電車の旅行を楽しんでいる。もちろん旅のお供は「カメラ」。

クリエイティブ派遣会社「フェローズ」が主催する4分以内の短編映画祭「フェローズフィルムフェスティバル 学生部門」は、若手の登竜門とも言われる存在だ。2024年の第7回コンペティションにおいて、応募総数245作品の中から審査員特別賞を受賞した造形芸術学科 バーチャルメディア・ボイスクリエイターコース3年生の炭井逸暉さんに、作品制作に対するこだわりや、大学での学びについてお話を聞いた。

小さな頃から好きだった、「記録すること、撮影すること」

小さな頃から、その時々の思い出や瞬間を記録することに興味があったという炭井さん。幼い頃からビデオカメラや携帯型ゲーム機に搭載されているカメラで日常的に撮影をして遊んでいた。
「中学生になってスマートフォンの動画編集アプリで編集できることを知ってからは、どんどん映像作りが面白くなりました」。
自然と将来の夢が「映像に関わること」へ向かっていくようになった炭井さんは、高校も映像デザイン科に進学。高校では、機材や動画編集ソフトの使い方といった技術面を主に学んだため、大学では映像制作のプロセスを体系的に学ぶことをめざし、進路を決めた。

「大阪成蹊大学芸術学部への進学の決め手は、今まさに制作現場で活躍されている方々から、変化が激しい映像制作の『リアル』を教えていただけるという点でした
そして、映像制作の根っことなる「企画力」、企画を作品に仕上げる「実行力」や「表現力」を実践的に培うカリキュラムが充実していたことも、魅力に感じたと話す。

CM制作のカリキュラムで商業映像の基本を学ぶ

「好き」や「面白い」という気持ちに突き動かされて直感的に制作していた中高生時代とは打って変わって、大学では商業的な課題解決型の作品に対する思考の深め方と表現力を鍛えることになった。
大阪成蹊大学 芸術学部 造形芸術学科 バーチャルメディア・ボイスクリエイターコースは、映像を撮る側と演技をする側の両面から映像制作を多角的に学べるのが特徴だ。撮影や編集における最先端技術はもちろん、ストーリー作りに欠かせない全体の構想やコンセプトの立案など、映像コンテンツに必要な企画力を養うためのカリキュラムを1年次から学んでいく

炭井さんに特に印象的だった授業を尋ねると、2年次に挑戦した企業と連携して制作するCMプロジェクトだと返ってきた。
「クライアントであるカフェの、1分程度のCMを制作する取り組みが印象に残っています。課題解決のために個々でシナリオを考え、監督兼編集を担当。カメラマンと仮撮影時の演者はみんなで協力して分担をしました」。
制作した作品は、テレビなどで流れるCMの多くがそうであるように、コンペティション形式で同級生や先生、クライアントからの評価を受ける。そして優秀な作品のみ、プロの俳優を起用した本撮影に進めるそうだ。
「残念ながら私の作品は選ばれませんでしたが、この授業を通じてプランナー、脚本家、監督、演者、カメラマンなど、複数の役割をひと通り経験しながら商業映像の基本的なフローを実践的に学べたことは、とても大きな力になりました」。

基礎演習で学んだシナリオ制作で自分らしい表現を見つける

もちろん、即戦力となり得るテクニックだけではなく、“自分らしさ”への探究は表現者に欠かすことができない。
「入学してすぐの基礎演習でシナリオ制作の具体的な方法を学んでからは、自分が得意とする表現を意識するようになりました」。

基礎演習の授業では、シナリオや絵コンテの書き方を軸に、商業作品の映画やアニメーションが実際のシナリオでどのように描かれているかを参照しつつ脚本と映像演出の関係性を分析したり、学生が自らオリジナルの登場人物を考案し、キャラクター設計と同時並行的にシナリオを構築するなど、アイデアを具体的な作品として表現する方法を実践する。
「コース主任の浅田伸先生からは、キャラクター作りの重要性を教えていただきました。キャラクターがしっかり描ければ、ストーリーの流れや配役、撮影の仕方まで紐付いてくる。シナリオは作品の核。ですから初期段階でしっかり作り込むことを大切にしています。私は少しシュールでユーモアがあるストーリーが好きなので、登場人物の個性には特にこだわるようになりました」。
この基礎演習で培った学びを意識しながら制作したのが「テレポートキャンディ」。「第7回フェローズフィルムフェスティバル」にて審査員特別賞を受賞した作品だ。

『テレポートキャンディ』制作のきっかけは「3年生展」

大阪成蹊大学 芸術学部では、大学時代の成果物の一つとして挙げられるように3年次の授業の一環で「3年生展」を企画し、運営する。
『テレポートキャンディ』は、この3年生展に出展するために制作された。

『テレポートキャンディ』は、超能力、超常現象を信じる主人公が、高架下で怪しげな露店を構える男と出会う。そこで瞬間移動が使えるようになる飴を勧められるがままに食べて…という話だ。


▲『テレポートキャンディ』ポスター

当初は15分程度の映像になる長さを持つアイデアだったが、浅田先生のアドバイスを受け、内容を二転三転させつつ最終的には4分程度にまとめたうえで、映画的な奥行きを持つシナリオへと昇華した。
「これでいいんだ、と納得する仕上がりになるまでに何度も書き直しました。とても時間がかかりましたね」。
超能力を信じる主人公が同級生に気味悪がられる、という少しネガティブな設定を織り込みながらも、エンディングではクスッと笑える、そんなストーリーをめざし、担当の浅田先生に相談しながらブラッシュアップを何度も重ねた。シナリオが完成する頃には、登場人物の個性が浮き上がってきて、キャスティングもスルスルと決まるほどだった。
登場人物のキャラクターがいかに重要だったかを実感しました。また、シナリオを作り込んだおかげで、ロケーションの選定や画角、色彩補正による映像演出にこだわることができ、一貫した世界観で表現できたと思います」。
シナリオ作成に3ヵ月、そして撮影に1ヵ月以上。4分のショートフィルムは、炭井さんの大学3年次の大半を費やして完成した。

これからめざす、映像表現と将来の夢

炭井さんの『テレポートキャンディ』は、短編映画祭「フェローズフィルムフェスティバル」にて245作品の中から審査員特別賞を受賞した。
2025年の1月には、渋谷区の映画館「ユーロライブ」で授賞式が行われ、作品が大スクリーンに映し出された。また最優秀賞を含む3本がBSフジにて放映されることとなり、その第1弾には本作が選ばれた。
炭井さんとその仲間たちは、期せずして映画館・テレビの同時デビューを果たすことになったのである。
今回のコンペティションを通じて、ずっと映像制作が好きで続けてきたことが評価されて報われたという気持ちと、自分の表現方法が間違っていないと確信を得ることができました。また、大きなスクリーンに作品が映し出されたときは、夢が叶ったと喜びを感じる一方で、制作時には気が付かなかった粗も見つかるなど新たな課題の発見もありました」。
審査員であり日本を代表する映画監督の堤幸彦氏からは、「今すぐにでもドラマを撮れる。プロフェッショナルとしての才能を感じる」と講評をもらった。


▲授賞式の様子

▲ 炭井さん(左から3番目)

「こだわったロケーションやあえて挿入した古臭いギャグの手法も認めてもらえた。シナリオに落とし込んださまざまな要素をしっかり伝えられたというのがわかった瞬間でした」。
特に、構成とカットワークを高く評価してもらえたことが、大きな自信につながったと話す。
次の目標は「もう少し長いショートドラマを作ること」
そして次に挑戦するコンペティションからは一般部門に変わり、自分より経験を積んだプロの人と争うことになることも課題の一つだと話す。
でも炭井さんの声からは不安を感じない。
「この経験を糧に、より自分らしい作品作りに挑戦していきたい」と目を輝かせる。

⼤学、そして⾼校⽣の後輩たちへ

最後に炭井さんに、後輩へのアドバイスをお聞きした。
「今回の受賞を通じて、好きなことを突き詰めれば技術も表現も磨かれることを実感しました。皆さんも好きなことを見つけてとことん挑戦してみてください。『好きなこと』に挑戦するという気持ちが、何かの壁を乗り越えるときの自分の支えになってくれるはずです」。

 

※在学生の表記は2025年1月取材時のものです。