PROFILE
- 経営学部 スポーツマネジメント学科2年生
- 平木 陽 さん
青森山田高等学校卒業。
陸上を通して、人とのつながりが広がったという。いろいろな県に友達ができ、世界大会に出場したことで、海外にもそのつながりは広がった。「陸上の練習も含めて、毎日楽しいって感じているので、陸上に出会えて良かったなと思います」。
陸上部の同学年とも大の仲良し。先日もその仲良し5人で箕面の滝へ。自然を感じてリフレッシュしたと話してくれた。
2016年に創部5年で日本インカレ女子総合優勝を達成。2017年に「台北ユニバーシアード競技大会」、2019年に「ナポリユニバーシアード競技大会」、そして2021年には「東京オリンピック」に代表選手を送り出すなど、顕著な成績を残す女子陸上競技部。
さらなる活躍が期待される中、注目される選手の一人が経営学部2年の平木陽さんだ。今年、400mH(ハードル)で「U20日本陸上競技選手権大会」2連覇、西日本インカレ優勝を果たした。しかし、高校生までは優勝に一歩届かないことが多かったという。大阪成蹊大学入学以降、飛躍を続ける彼女の成長の理由に迫った。
変わることも恐れず、続けてきた陸上競技生活
平木さんと陸上競技との出会いは、小学校4年生のときのこと。「私の小学校は部活動ができるのは小学校4年生からでした。仲良しの友達が、陸上部に入ることが多かったことと、陸上部ならそのときしていたピアノや学習塾などの習い事も続けながらできるかなと」。
当時は軽い気持ちで始めた陸上競技だったが、気が付けば小学校、中学校、高校と続けていた。 小学校では100m、中学校では100mと200mを専門にしていた平木さん。進学先の青森山田高校でも同じ種目に取り組もうと思っていたが、陸上部の先生からの勧めで400mに取り組んだ。
短距離走を専門にしてきた彼女が、ハードル走で大会に出場したのは高校3年生の夏のこと。「一回出てみたい」。その気持ちで一歩踏み出してみた。インターハイ予選に400mと400mHとで出場すると、どちらも見事に本戦への出場権を獲得することができた。
金丸監督に誘われ、大阪成蹊大学へ
高校卒業後の進路を考えていた平木さんに声を掛けたのは、大阪成蹊大学女子陸上競技部の金丸祐三監督だった。現役時代、北京・ロンドン・リオと3度のオリンピック出場、7度の世界選手権出場、2005年から2015年の日本選手権男子400mで11連覇を果たすなど、第一人者として長く活躍してきた人物だ。2022年に監督に就任し、オリンピック・世界選手権で活躍できる選手の育成を目指す中、声を掛けた。
「監督とお話をしたときに、技術的なことはもちろん、人としてであったり、いろんな面で一番成長できる場所だと感じました」と平木さんは、大阪成蹊大学進学のきっかけを教えてくれた。
青森県から大阪府へ。
不安はなかったのか尋ねると、「実家から離れるし、おいしいご飯は食べられなくなるし、一人暮らしなので家事もしなければならないしと不安はありました。でも新しい友達もできるので楽しみもあるかなと思っていました」と不安半分、期待半分だったという。
実際大学に入学してみると、さまざまな地域から来たたくさんの友達ができた。「友達が帰省したときには、その地域の食べ物・お土産がもらえるので楽しみです(笑)」。
平木さんは、経営学部のスポーツマネジメント学科に所属する。「授業ではスポーツを支える側、大会を主催・運営している方々が、どんなことをしてくれているのか知ることができました。大会に出場するときには、そういった方々やスポンサーなども含めて、試合に対してより感謝の気持ちを持つようになりました」と大学生活での変化を教えてくれた。
▲陸上部の仲間と
精神・技術・肉体、共に成長を実感
大阪成蹊大学女子陸上競技部へ入部後、平木さんは400mと400mHを中心に取り組んでいる。400mHは、35m間隔に並べられたハードルを計10台飛び越えながらゴールを目指す。「ハードルがある分、ペースや歩幅など考えることも多い。頭の中で、いかに焦らずに自分のリズムで走れるかが大切だと思います」と教えてくれた。身体能力だけでなく、より思考力が求められる。
金丸監督の指導は「考えさせる」と平木さんが言うように、まさにその思考力が鍛えられた。
「自分の走りがどうか、どうしたら良いか、1年生のはじめのころはすぐに聞きに行っていましたが、まずは自分で考えてみるようになりました。自分なりの答えが出たら監督のところに行き、意見をすり合わせています」。
金丸監督との会話は、技術指導だけでなく、1年間のどの時期に力を入れるのか、今後どのように成績を上げていくのか、長期的なビジョンにまで及ぶ。「経験が豊富な方で、優しく選手一人ひとりに寄り添い親身になってくれる。本当に感謝の気持ちでいっぱいです」と平木さんは金丸監督への想いを口にする。
金丸監督からの指導の他に、成長のきっかけとなったのが、怪我をしていた期間だ。昨年の7月末にハムストリングスを負傷。走っているときに片足だけ痛くなったり、左右の動きに差を感じるようになった。怪我の間に取り組んだのが、体の使い方を学ぶこと、そしてウエイトトレーニングだ。
「トレーナーさんと、痛くならない動き方を相談していました。またコンディショニングも今まで以上に丁寧にするようになりました。そのおかげで段々と体の使い方が分かるようになり、効率よく走れるようになってきていると思います。加えてウエイトトレーニングで筋力もアップしたので、よりパワーがある走りができるようになってきたと思います」と自身の体の変化について教えてくれた。
▲沖縄合宿 平木選手(後列右から2番目)・金丸監督(前列中央)
不安を抱えながら始まった2年生のシーズン
心・技・体、共に成長した2年生のシーズン。しかし、そのスタートは思いも寄らないものだった。
「もともと足首が弱かったこともあり、痛みが出てしまい、1年生の1〜3月は全く走ることができませんでした。そんな状況の中、4月からシーズンが始まって、不安も大きかったです」。
4月からいくつかの大会に出場したが、なかなか結果がついてこない。しかし、そんな状況でも平木さんの気持ちは前を向き始めていた。
「ただこの一年間の自己ベストを出したい。去年悔しい思いをしたインカレで、今年は結果を出したい」。
迎えた6月27日〜30日開催の「U20日本陸上競技選手権大会」。昨年優勝を果たした大会だ。400mHの予選では、2組目に走り1着で通過した。
決勝は雨が降る中、緊張感を抱えながら走る。タイムは「58秒02」。自己新記録、大会新記録、そして大会2連覇。続く7月5日〜7日に開催された西日本インカレの400mHでも、見事優勝を果たした。
▲日本陸上競技選手権大会2連覇 平木選手(中央)
▲西日本インカレ優勝 平木選手(中央)
結果を残し掴み取った、初めての世界の舞台
大会後、平木さんにとって驚きの知らせが届く。「リマ2024 U20世界陸上競技選手権大会」へ、女子400mHの日本代表として出場することが決まったのだ。「大会が終わった後にお話をいただいて、すごく嬉しく思いました。一方で初めて日本代表として海外の大会で走るので、大丈夫かな、どんな感じなんだろうとも思っていました」と喜びと不安な気持ちがあったと当時の心境を口にする。
迎えた8月28日の大会当日。「ペルーのリマに着いてから数日経っていたこともあって、ガチガチに緊張していたというより、少し楽しみながら臨むことができました」。ほどよい緊張感とリラックス状態。精神的には、良い状態でスタートラインに立てた。
スタートの号砲が鳴る。と同時に感じたのは世界との差だった。
「とにかくその速さに驚きました。前半からスピードを出していく選手が多くてついていくことができなかった。これまでの自身の記録が出せたら予選は通過できましたし、準決勝、決勝を目指していたので、自分の力を出し切れずに悔しかったです」。
雪辱を果たすため、次の目標に据えているのが「学生のためのオリンピック」と呼ばれている、2025年7月にドイツで開催予定の「FISUワールドユニバーシティゲームズ」だ。
「これまで世界大会は、レベルの高い遠いものだと思っていました。今回出場してみて、目指しても良いんだと思うようになりました。また世界の舞台で走ってみたいと思っています」。大阪成蹊大学から世界の舞台へ一歩踏み入れた彼女。さらなる飛躍が期待される彼女をこれからも応援したい。
写真提供:月刊陸上競技
大学、そして高校生の後輩たちへ
最後に、平木さんに後輩へのアドバイスをお聞きした。 「大学生になると、時間の使い方が大切だと感じています。高校生のときのように、毎日朝から夕方近くまで必ず授業がある訳ではないので、自由に使える時間も増える。その分、できることも多いと思います。まずは自分から行動を起こしてチャレンジ。迷ったらやってみた方が良いと思います。チャレンジも含めて、何事も楽しんで取り組んでみてください」。
※在学生の表記は2024年10月取材時のものです。