“AI・データサイエンス” というフレーズを最近よく耳にしませんか?
近い将来訪れるSociety5.0と呼ばれる社会では、AI・データサイエンスの利用・活用に関する知識が必須となってきます。
“AI・データサイエンス”などと言われても・・・ハテナ??いいえ、決して臆するものではありません。みなさんが日々過ごしているさまざまなシーンで使われているテクノロジーになっています。
今回は皆さんが大好きな「スポーツ」と“AI・データサイエンス”の関わりについて、山田教授に伺いました。
スポーツとデータサイエンス
今日においては、センシング技術や解析技術の向上によって取得可能なデータは飛躍的に増えています。取得したデータは、意味が分からなければただの数字や文字の羅列。これを意味のある「情報」に変えていくことが求められます。
私は幸運にもJリーグや世代代表などトップチームのフィジカルコーチを経験し、並行してデータ分析を学ぶという経歴を歩んできました。スポーツの現場と科学的研究の現場、両方を経験してきたので、例えば、このシチュエーションのデータを取れば「パスのうまさが分かる」という感覚を持っています。それは仮説を立てて検証する力であり、スポーツにおけるデータサイエンスの活用に欠かせない素養と言えます。
データ分析ができる人はいます。スポーツの現場で活躍する人もいます。でもその両方を組み合わせられる人は実は少ない。これからのスポーツ界で成果を求めるなら、データサイエンスとスポーツ、2つの経験が必須となってくるでしょう。
選手やチームを強くしていくということの他にも、データはスポーツ界を変える力を秘めています。それはメディアの進化です。既にサッカーであればボールを保持していたデータ(位置と時間)をヒートマップで可視化していたり、野球ではピッチャーが投げたボールの回転数や軌道、バッターの打球角度などがリアルタイムで表示されたり、観戦の楽しみ方は広がっています。データは何も数字だけじゃありません。文字もデータです。例えばテレビ観戦をしていて、ある選手の情報を「知りたい」と呟いたらAIが選手の情報を表示してくれる、なんてことも考えられますよね。そういうサービスが生まれる期待も、スポーツ×データサイエンスにはあります。
スポーツ現場のはなし
今、スポーツ界では、“AI・データサイエンス”の研究・実装がスタートしています。これまで感覚的に捉えられていたプレーが数値や映像で可視化され、選手のパフォーマンス向上や戦術に活かされるようになりました。
「SPORTS×AI・データサイエンス」の可能性は無限の広がりをみせています。
たとえばサッカーで「パスがうまい」というのは、すごく感覚的なもの。これを数値化しようという試みが、いわゆるデータ分析です。まず、各選手にさまざまなシチュエーションにおけるパス機会を提示し、「通せる確率」を出してもらいます。そこで集まったデータから、選手のスキルやパスの難易度を読みときます。この数値化された「パスのうまさ」は、戦略を立てるのに活用できたり、個々の練習メニューへの反映も可能になります。
つまりデータ分析は、選手やチームを強くする可能性を秘めています。これはサッカーに限らず、どのスポーツにもいえることです。
データサイエンティストによる講義「スポーツ×データサイエンス」
びわこ成蹊スポーツ大学に入学された学生には、データをどう分析していけばスポーツに役立てられるのかを考えてほしいと思っています。あらゆるスポーツに含まれるデータに触れてください。そして学んでください。本学では全学生にデータサイエンスを学べる環境を準備していきます。なぜならそれは、スポーツを冠する大学の役目だと確信しているからです。
全学生必修の初年次科目「成蹊スポーツ基礎演習」の講義の中では、“日本を代表する凄腕データサイエンティスト19人(週刊ダイヤモンド)”に選出された古屋俊和講師が、「スポーツ×データサイエンス」についてレクチャーしており、社会におけるAI・データ活用の最新動向やスポーツ界での事例紹介、またAIを用いたトレーニングメニュー分析のワークショップを実施しています。
“凄腕データサイエンティスト”の講義は、社会との接点を見つけたり、より発展的なレベルへの意識づけになっています。データサイエンティストという新たな職業についての期待も広がるでしょう。
なんだかワクワクしてきませんか。
アスリート・データ・バンク構想
びわこ成蹊スポーツ大学では、大阪成蹊大学に2023年開設予定の「データサイエンス学部(※)」と連携し、教育・研究体制の整備をすることで、スポーツ学の学びをより深化させます。データ収集では、本学の学生に留まらず、国体チームなどの地域チームや協定プロチームなど、学外団体との連携をはかっていきます。また、スピードや加速度を計測したり、無線筋電図で筋生理系の測定をしたり、モーションキャプチャーカメラで身体動作の計測をしたり、機材を投入することで解析に役立てます。
データ収集からのデータ解析、そしてフィードバック、また新たな仮説をもとにデータ収集を行う、そのようなサイクルを確立させる “アスリート・データ・バンク”は、世に貢献するリソースとなることをめざします。
※令和4年10月27日(木)付で文部科学省より設置認可されました。(11月9日追記)
【関連リンク】
◆大阪成蹊大学スポーツイノベーション研究所
https://univ.osaka-seikei.jp/education/lab/sports_innovation/
◆山田 庸教授 教員紹介
https://biwako-seikei.jp/department/teacher/46